鏡の法則

深く傷ついた心を癒すことで、自分に掛けてきた制限が外れ、迷うことなく望む方向へ進んで行けるようになります。→【インナーチャイルドを癒すメッセージ】

鏡の法則

幸せ成功力コーチの野口 嘉則さんの「鏡の法則」

鏡の法則1の続きです。

いじめを克服する鏡の法則

A子「その心理学の話を教えてください。」

B氏「現実に起きる出来事は、一つの『結果』です。 『結果』には必ず『原因』があるのです。 つまり、あなたの人生の現実は、あなたの心を映し出した鏡だと 思ってもらうといいと思います。

例えば、鏡を見ることで、『あっ、髪型がくずれている!』とか 『あれ?今日は私、顔色が悪いな』って気づくことがありますよね。 鏡がないと、自分の姿に気づくことができないですよね。 ですから、人生を鏡だと考えてみて下さい。

人生という鏡のおかげで、私たちは自分の姿に気づき、自分を変える きっかけを得ることができるのです。 人生は、どこまでも自分を成長させていけるようにできているのです。」

A子「私の悩みは、私の何が映し出されているのですか?」

B氏「あなたに起きている結果は、『自分の大切なお子さんが、 人から責められて困っている』ということです。 考えられる原因は、あなたが『大切にすべき人を、責めてしまっている』 ということです。 感謝すべき人、それも身近な人を、あなた自身が責めているのでは ないですか?一番身近な人といえば、ご主人に対してはどうですか?」

A子「主人には感謝しています。トラックの運転手として 働いてくれているおかげで、家族が食べていけてるのですから。」

B氏「それは何よりです。では、ご主人を大切にしておられますか? 尊敬しておられますか?」

A子は、「尊敬」という言葉を聞いたときに、ギクッとした。

A子は、日ごろから夫のことを、どこか軽蔑しているところがあったからだ。

A子から見て、楽観的な性格の夫は、「思慮の浅い人」に見えた。 また、「教養のない人」にも見えた。

たしかに、A子は四年制の大学を卒業しているが、夫は高卒である。 また、それだけではなく、夫は言葉ががさつで、本も週刊誌くらいしか 読まない。読書が趣味のA子としては、息子に、「夫のようになってほしくない」 という思いがあったのだ。 A子は、そのこともB氏に話した。

B氏「『人間の価値は教養や知識や思慮深さで決まる』と 思っておられますか?」

A子「いえ、決してそんなふうには思いません。人それぞれ強みや 持ち味があると思います」

B氏「では、なぜご主人に対して、『教養がない』ことを理由に 軽蔑してしまうんでしょうね。」

A子「うーーーん。私の中に矛盾がありますね。」

B氏「ご主人との関係は、どうなんですか?」

A子「主人の言動には、よく腹が立ちます。喧嘩になることもあります。」

B氏「息子さんの件で、ご主人とはどうですか?」

A子「息子がいじめられていることは、いつもグチっぽく主人に言っています。 ただ、主人の意見やアドバイスは受け入れられないので、主人にちゃんと 相談したことはありません。おそらく、私にとって主人は、 一番受け入れられないタイプなんだと思います。」

B氏「なるほど。もう一つ根本的な原因がありそうですね。 ご主人を受け入れるよりも前に、そっちを解決する必要があります。」

A子「根本的な原因ですか?」

B氏「はい、あなたがご主人を受け入れることができない根本的な 原因を探る必要があります。ちょっと伺いますが、ご自分のお父様に 感謝しておられますか?」

A子「えっ?父ですか?そりゃもちろん感謝してますが・・・」

B氏「お父様に対して『許せない』という思いを、心のどこかに 持っていませんか?」

A子は、この「許せない」という言葉にひっかかった。 たしかに自分は父を許していないかもしれない、そう思った。 親として感謝しているつもりであったが、父のことは好きになれなかった。

結婚して以降も、毎年の盆・正月は、実家に顔を見せに家族で 帰っている。しかし、父とは、ほとんど挨拶ていどの会話しかしていない。 思えば、高校生のころから、父とは他人行儀な付き合いしかしてこなかった。

A子「父を許してないと思います。だけど、父を許すことはできないと思います。」

B氏「そうなんですね。じゃあ、ここまでにしますか? お役に立てなかったとしたら、申し訳ありません。それとも、 何かやってみますか?」

A子「私の悩みの原因が、本当に父や主人に関係しているんでしょうか?」

B氏「それは、やってみたらわかると思いますよ。」

A子「わかりました。何をやったらよいか教えてください。」

B氏「では、今から教えることをまずやってみてください。 お父様に対する『許せない』 という思いを存分に紙に書きなぐって下さい。怒りをぶつけるような文章で。

『バカヤロー』とか『コノヤロー』とか『大嫌い!』とか、そんな言葉もOKです。 具体的な出来事を思い出したら、その出来事も書いて、 『その時、私はこんな気持ちだったんだ』ってことも書いてみてください。

恨みつらみをすべて文章にして、容赦なく紙にぶつけてください。 気がすむまでやることです。充分に気がすんだら、また電話下さい。 携帯の番号も教えておきます。」

A子にとって、そのことが、息子の問題の解決に役立つのかどうかは疑問だった。 しかし、それを疑って何もしないよりも、可能性があるならやってみようと思った。 A子は、「今の悩みを解決できるなら、どんなことでもしよう」と思っていた。

それに、B氏の話には、根拠はわからないが、不思議な説得力を感じた。

A子は電話を切ると、レポート用紙を持ってきて、父に対する思いを、 思いつくままに書き始めた。

自分が子どものころは、なにかと口やかましい父だった。 夕食が説教の時間になることも多かった。 また、子ども達(A子と兄弟)が自分の思い通りにならないと、すぐに大声で 怒鳴りつける、そんな父だった。

「お父さんは、私の気持ちなんか興味ないんだ!」と、そう思うことも多かった。 お酒を飲んだ時に、仕事のグチを言うところもイヤだった。 また、建設会社で現場監督をしていた父は、砂や土で汚れた仕事着で 帰って来て、そのまま食事をすることが多かったが、それもイヤだった。

A子は、父に対しての気持ちを文章にしていった。

気がついたら、父に対して「人でなし!」とか「あんたに親の資格なんかない!」 とか、かなり過激な言葉もたくさん書いていた。

ある出来事も思い出した。

自分が高校生のころ、クラスメイトの男の子と日曜日にデートをしたことがあった。 その男の子と歩いているところを、たまたま父に目撃され、後で問いただされて 説教されたことがあった。

両親には、「女の子の友達と遊ぶ」と嘘をついていたのだが、父はその嘘を 許せないようだった。

その時の、父の言葉は今も覚えている。

「親に嘘をつくくらい後ろめたい付き合い方をしているのか!お前は、 ろくな女にはならん!」思い出しているうちに悔し涙が出てきた。 悔しさも文章にした。

「お父さんがそんな性格だから、嘘もつきたくなるんでしょ! 自分に原因があることも分からないの?

それに『ろくな女にならない』って、なんてひどい言葉なの。 私がどのくらい傷ついたか知らないんでしょう!

あんたこそ、ろくな親じゃない! あれから私は、お父さんに心を開かなくなったのよ。自業自得よ!」

書きながら、涙が止まらなかった。

気がついたら、正午を回っていた。

書き始めて2時間近く経っていた。

十数枚のレポート用紙に、怒りを込めた文章が書きなぐってあった。 容赦なく書いたせいか、それとも、思いっ切り泣いたせいか、気持ちが ずいぶん軽くなっていた。

A子は、午後1時を回ったところで、B氏に電話をした。

B氏「お父様をゆるす覚悟はできましたか?」

A子「正直なところ、その覚悟まではできていないかもしれません。 だけど、できることは何でもやってみようと思います。 ゆるせるものなら、ゆるして楽になりたいとも思います。」

B氏「では、やってみましょう。

お父様をゆるすのは、他でもない、あなた自身の自由のためにゆるすんです。 紙を用意してください。 そして、上の方に『父に感謝できること』というタイトルを書いてください。 さて、お父様に対して感謝できるとしたら、どんなことがありますか?」

A子「それは、まず、働いて養ってくれたことですね。 父が働いて稼いでくれたおかげで、家族も食べていけたわけですし、 私も育ててもらえたわけです。」

B氏「それを紙に書き留めて下さい。他にもありますか?」

A子「うーーーん。私が小学生のころ、よく公園に連れていって 遊んでくれましたね。」

B氏「それも書き留めておいて下さい。他には?」

A子「それくらいでしょうか。」

B氏「では、別の紙を用意して『父に謝りたいこと』ってタイトルを書いてください。

さて、お父様に謝りたいことは、何かありますか?」

A子「特に浮かびませんが、あえて言えば、『心の中で反発し続けたこと』 でしょうか。ただ、心から謝りたいという気持ちにはなれませんが。」

B氏「実感がともなわなくてもOKです。形から入りますから。 とりあえず、今おっしゃったことを書き留めてください。」

A子「書き留めました。で、形から入るといいますと、何をやればいいのですか?」

B氏「いいですか、今から勇気の出しどころです。

もしかしたら、あなたの人生で、一番勇気を使う場面かもしれません。 私が提案することは、あなたにとって、最も抵抗したくなる行動かもしれない。 実行するかどうかは自分で判断して下さいね。

今から、お父様に電話をかけて、感謝の言葉とあやまる言葉を伝えるのです。 実感が湧いてこなかったら、用意した言葉を伝えるだけでもOKです。

『父に感謝できること』と『父にあやまりたいこと』の2つの紙に書き留めたことを、 読んで伝えるだけでOKです。 伝えたら、すぐに電話を切ってもらってかまいません。やってみますか?」

A子「・・・・・。たしかに、今までの人生で使ったことがないくらい、 勇気を使わないとできませんね。でも、これが私の悩みの解決に役立つなら、 それだけの勇気を使う価値はあるんだ思います。だけど、難しいですねー。」

B氏「やるかやらないかは、ご自分で決めてくださいね。

私も、一生に一度の勇気を使う価値はあるとおもいますけど。 それから私は、次の予定がありますので、このあたりで失礼します。 もし実行されたらご連絡下さい。次のステップをお教えします。」

A子にとって救いなのは、「形だけでいい」ということだった。

「謝る」ということについては、気持ちがともなわない。 「悪いのは父親の方だ」という思いがあるから、自分が謝るのは筋違いだと思う。 だけど、書き留めた文章を棒読みするくらいならできそうだ。 それならば、やってみた方がいいに決まっている、と思えた。

A子は「電話をかけよう」という気になってきた。 そして、電話をかけようとしている自分が、不思議だった。 こんなきっかけでもなかったら、A子が父親と電話で話すということは、 一生なかったかもしれない。

結婚して間もないころは、実家に電話をして父が電話に出たときは、すぐさま 「私だけど、お母さんにかわって」と言っていた。 しかし今は、「私だけど」と言っただけで、父の「おーい、A子から電話だぞ」と 母を呼ぶ声がする。

父も「A子から自分に用事があるはずない」ということわかっているのだ。

しかし、今日は電話で父と話すのだ。

「躊躇していたら、ますます電話をかけにくくなる」と思ったA子は、 意を決してすぐに電話をかけた。

電話に出たのは、母だった。

A子「私だけど」

母 「あら、A子じゃない。元気にしてる?」

A子「うん、まあね。・・・ねえお母さん、お父さんいる?」

母 「えっ?お父さん?あなたお父さんに用なの?」

A子「う、うん。ちょっとね。」

母 「まあ、それは珍しいことね。ねえ、お父さんに何の用なの?」

A子「えっ?えーと、ちょっと変な話なんだけど説明するとややこしいから、お父さんにかわってくれる?」

母 「わかった、ちょっと待ってね。」

父が出てくるまでの数秒間、A子の緊張は極度に高まった。

すっと父のことを嫌ってきた。

父に心を開くことを拒んできた。 その父に、感謝の言葉を伝え、あやまるのだ。 ふつうに考えて、できっこない。

しかし、息子のことで悩みぬいたA子にとって、その悩みが深刻であるがゆえに、 ふつうだったらできそうにない行動を取っているのだった。

もしも、その悩みから解放される可能性があるなら、 わらにもすがりたいし、どんなことでもする。 その思いが、A子を今回の行動に向かわせたのだ。

父 「な、なんだ? わしに用事か?」

A子は、自分では何を言っているかわからないくらいパニックしながら話し始めた。

A子「あっ、あのー、私、今まで言わなかったんだけど、言っといたほうが いいかなーと思って電話したんだけど、・・・えーと、お父さん、 現場の仕事けっこう大変だったと思うのよ。 お父さんが頑張って働いてくれて、私も育ててもらったわけだし。

あのー、私が子どものころ、公園とかも連れて行ってくれたじゃない。 なんていうか、『ありがたい』っていうか、感謝みたいなこと言ったこと ないと思うのよ。 それで、一度ちゃんと言っておきたいなと思って、・・・。

それから私、心の中で、けっこうお父さんに反発してたし、 それもあやまりたいなと思ったの。」 ちゃんと「ありがとう」とは言えなかったし、「ごめんなさい」とも言えなかった。

鏡の法則3へ続く